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もし、中華式朝食屋の魂を代表するものを挙げよと言われたら、それは言わずもがな「鹹豆漿」(台湾式おかず豆乳スープ)でしょう。

2017-03-09

みんなが食べる勇気の出ない「鹹豆漿」:でも、私はこれこそ中華式朝食屋の魂だと思う

もし、中華式朝食屋の魂を代表するものを挙げよと言われたら、それは言わずもがな「鹹豆漿」(台湾式おかず豆乳スープ)でしょう。


お碗に醤油適量、酢にごま油を少々、刻んだザーサイまたはレーズンをひと掴み入れたら、さらに乾燥させた小エビをスプーンひと匙。熱々の豆乳をお碗に注ぎ、最後に小口切りにしたネギと砕いた油条を散らして完成。これら全ての材料は、その1つ1つがとても大切。醤油、酢、ごま油の比率は、各店舗独自の味加減のポイントとなっています。塩気、酸味と香りがちょうどいいバランスに収まって初めて、素晴らしい風味が生まれます。食感を決めるのはザーサイやレーズンです。刻み加減や、食材そのものの味や食感が、客をやみつきにさせるかどうかに影響します。小エビは新鮮で清潔であるものを。透き通っていて、微かに琥珀色を帯びており、体の形が崩れていないものがベストです。2つの眼がしっかり揃っていてこそ、鹹豆漿に新鮮さを加えることができるのです。豆乳はこのメニューの主役。だから、他の「脇役」たちに主役の座を奪われる訳にはいきません。大豆の香りが濃厚なものを選ぶのは基本ですが、さらにほのかに香ばしい香りのするものを選べば、風味がさらにアップします。

 

最後に散らす薬味にも、気は抜けません。ネギは必ず細かい小口切りにします。万一大きすぎるネギに、ぬるめの豆乳を合わせたら、ネギの青臭さだけが残ることになってしまいます。油条はさらに工夫が必要です。一番は、何と言っても作りたての生地をその場で揚げること。便利だからと他のお店から買ってくる朝食屋もありますが、揚げてから時間の経った油条は、サクサク感が失われ、味に深みもありません。油条の歴史は長く、古くは南宋で秦檜が岳飛を迫害した際に、民が油条を作って抗議したことが知られています。※中国の古典、「寒具詩」のなかでも油条の製造過程について触れています。捏ね、伸ばし、分割し、寝かせ、成形し、そして最後に揚げる…という一連の流れは一つの芸術であり、先祖代々受け継がれた科学でもあります。自家製の油条作りを極められていない店は、決して良い中華式朝食屋であるとは言えません。

美味しい鹹豆漿は得難いもの。手のひらでお椀を包み込み、詳細に観察してみると…

「…なんだか嘔吐物みたい」と友人。
「そう?私は君の人生みたいだな、て思ったけど」と私。
「味噌汁みたいなものでしょ」とは、もう一人の友人の感想。
そう。日本の朝食に欠かせないものと言えば、味噌汁。それが台湾では、鹹豆漿。お酢を加えることで分離した熱々の豆乳が、混ぜるたび、調味用を加えるたびにお椀のなかで舞います。ラー油を足すことで味の層が増し、卵を加えると更にまろやかな口当たりになります。
私が飲んでいるのはただの鹹豆漿ではなく、中華式朝食店の魂であり、このお店の心なのです。見た目はそんなに美しくないかもしれませんが、味は絶品、お墨付きです。


作者:Loti  譯者:島村朋惠  攝影:美字哥  插畫:Ryan Hong